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CL(NCL)病:セロイドリポフスチン症 (Ceroid Lipofuscinosis)

■ ボーダーコリーの神経セロイドリポフスチン症(NCL/CL)とは

『ボーダーコリーの神経セロイドリポフスチン症(NCL)』

  ボーダーコリーのNCLは犬の身体の神経細胞を冒す稀な病気です。それは蓄積症としても知られています。これは遺伝性の病気です。伝染性ではありません。また、致命的で治療法がありません。
 オーストラリアで、最初のボーダーコリーのセロイドリポフスチン症のケースは1980年に確認されました。日本では、2002年から現在(2006年春)までに大和教授が診断に至ったものだけでも20頭近く出ています。

『NCLの症状と診断』

  NCLは進行性の運動障害・知的障害・視力障害を主徴とする致死性疾患です。また、比較的高年齢(1歳以降)で発症します。発症した犬は、およそ15ヶ月までは正常に見えます。しかし生まれながらに、体の細胞にセロイド様・リポフスチン様の蓄積物質をためてしまうような欠陥が存在します。脳細胞はこれらの蓄積物質をためつづけ、最終的には、脳細胞を機械的に圧迫し、あるいは機能的に障害して、これにより神経症状が現れます。その結果、2歳までには下記のいくつかの、またはすべての兆候が認められます。

・常軌を逸した不安、あるいは見慣れたもの(物体・環境)への恐怖、視力障害。
・異常な足取り、ジャンプや登り降りの困難、足をつっぱっ たり、膝を曲げないで脚をまっすぐに伸ばして歩こうとする。
・精神錯乱した行動、躁病、過度な活動、狂暴。
・方向感覚の喪失。病的な執着.トイレトレーニングの喪失.奇妙な、あるいは異常な行動。 等.

 この病気は一旦初期の兆候が現れると大抵の場合、急速に進行します。そして苦痛に苦 しむ犬は3歳半以上(ほとんどの場合は2歳半)生存することはありません。不幸にも、発症した犬の治療法はありません。

『歴史』

  1980年6月、17ヶ月の雌のボーダーコリーについて、痙攣と視力障害でメルボルン大学 に問い合わせがありました.その年の12月、19ヶ月の別の雄犬についても研究が行われました。メルボルンのEye and Ear Hospitalでの検査の後、その犬はセロイドリポフスチン症を発症していることが示唆されました。犬は安楽死され、解剖されて比較されました。2頭の犬は同じ症状で苦しんでいたと考えられました。別の母犬から生まれた3つのケースが1985年、86年に診断され、他のケースも1987年、88年に確認されました。以来、他の胎でも発症していることが確認され(1980年から1998年の間に)全部で18胎からCLの子犬が生み出されて診断されています。          
(参考:1998年 Border Collie of NSW. Inc"BORDERTALES")

『NCL遺伝とNCLの遺伝形質』

  最近の研究で、ボーダーコリーのNCLの原因はCLN5遺伝子の変異であることがわかりました。この変異遺伝子は常染色体性劣性遺伝様式で子孫に伝達されます。つまり、
・雄雌両方とも等しく発症します。
・発症犬の父犬と母犬はキャリアであるか、あるいは親犬自体が発症個体のこともあります。
・キャリア犬と非キャリア犬が交配した場合は、半分の子がキャリアになります。

 一般に雄犬・雌犬は3タイプのうち1タイプに分類されます。
*クリア:変異遺伝子を継承しません。つまり、完全にNCLを生み出すことはありませ ん。
*キャリア:変異遺伝子を継承しています.つまり、発症はしませんが、子孫に変異遺伝子を継承する可能性と、キャリアあるいは発症犬との交配によりNCLを生み出す可能性を持ちます。
*発症:両親から変異遺伝子を継承しており、必ず発症します。発症犬の子はすべてキャリアか発症犬です。 

※以下の文章は私たちの質問に大和先生が答えてくれたものです

《質問:CLのDNAテストによりクリアと証明された犬どうしの交配を続ければCLキャリアが生まれることは決してないといえますか?》

 解答:このCLN5の変異に基づくボーダーコリーのCLは生まれてくることは「ほぼ」ありませ ん。「ほぼ」と言ったのは理論的には天文学的確率で突然変異が生殖細胞に生じた時 に病気が発生します。遺伝病のはじまりはすべて突然変異です。一般的には、「決してない」と答えても間違いではありません。

《質問:キャリアどうしの交配は、必ず発症犬を生むのでしょうか?》

解答:キャリアどうしの交配で、ある1頭の子犬が発症犬である確率は4分の1(25%)です。だから発症犬でない確率は、その逆の4分の3(75%)です。75%(0.75)を何回かけると非現実的な確率になるか試してみるとよいと思います。最初の交配で8頭生まれて、すべてが発症犬でない確率はおよそ10%です。だからといって、もう一回同じ交配をして8頭生まれてそれでも発症犬が1頭もいない確率となると、1%になります。キャリアどうしを2回交配すると99%の確率で発症犬をつくるということです。

《質問:幼児期にDNAテストにより発症と判定された犬は必ず発症しますか?》

解答:必ず発症します。

■ JBCHNにおけるDNA検査結果レポート

 平成14年(2002年)から平成21年8月(2009年)現在、JBCHNが把握しているCL症の発症例は23頭に登っており、毎年必ず発症例を確認しています。
今年も8月に1頭のボーダーコリーがCL症により死亡しました。

 また、JBCHNが平成18年9月8日にCL症のDNA検査を始めてから現在までで、キャリアと判定された犬が検査全頭数の7%を超えているのが現状です。

■ 特集/先天性・遺伝性疾患 2005  「ライソゾーム病」  大和 修 教授

『ライソゾーム病の発症メカニズム』

  細胞小器官であるライソゾーム(水解小胞)には60余種の酸性水解酵素が存在しこれらの酵素群が、細胞内外から取り込まれる物質を分解する役割を担っている。これらのライソゾーム酵素は、膜結合ポリリボゾームで合成され、ゴルジ装置で糖鎖が付加されリン酸化された後、ライソゾームに転送される。この過程に何らかの異常が生じた場合などには、特定基質が代謝されず、ライソゾーム内に過剰に蓄積し、物理的あるいは化学的に細胞機能が傷害され、ライソゾーム病が発症する。ライソゾーム病の多くが、進行性の神経症状を呈する神経変性性疾患である。現在のところ、このような疾患に対しては有効な治療法は見出されていない。

『ボーダーコリーの神経セロイドリポフスチン症』

  神経セロイド・リポフスチン症(NCL)は、神経細胞およびその他の全身の細胞に自家蛍光性のリポピグメントが蓄積し、主に進行性の行動異常、運動障害、視力障害、痙攣、知的障害などを発現する致死性の神経変性性疾患である。また、NCLは多くの疾患の集合体であるため、動物での報告数もライソゾーム病中で最も多く、犬で25品種、猫で3品種の報告である(著者の集計)。しかし動物での病型分類はほとんど行われておらず、その臨床症状により大まかな臨床型の分類が行われているに過ぎなかった.ところが最近になって、犬のNCLの分子基盤に関する研究が進み、イングリッシュ・セター(CLN8遺伝子)に続き、犬では2番目にボーダーコリーのNCLのCLN5遺伝子の原因変異が明らかにされた。ボーダーコリーのNCLは、遅くとも1980年代にはニュージーランドおよびオーストラリアで認識されていた疾患である。日本国内では3年程前から発生し始め、現在までに10数頭以上の発症犬が同定されている。

【臨床症状】

  犬のNCLの臨床症状は多様で犬種による差も大きいが、その多くは早期成年発症型(1〜2歳で発症)や成年発症型(2歳以上に発症)であり、ボーダーコリーも早期成年発症型に属する。一般に犬猫の遺伝病が1歳までには発症すると信じられていることを考慮すると、NCLはその一般概念からかなり外れた疾患であるといえる。そのため、実際にその存在を認知していなければ、なかなか臨床診断には至らないことも多いのではないだろうか。

《NCLのボーダーコリーの臨床症状:臨床症状とその発症月齢(平均)》

臨床症状
発症月齢(平均)および詳細
行動異常
16〜23ヶ月(平均19.5ヶ月)
強迫性暴走、無目的俳諧、恐怖心、噛む、刺激(音、見るもの、触ること)に対する過剰反応、吠え続ける、騒ぐ、道に迷う、逆上、マニア行動、激怒、厳格、存在しないものを噛もうとする、ハエ追い行動、ビクつき、生き物でないものに対する威嚇行動、記憶喪失、集中力の欠如、投げた物を追わない、無気力、他の犬に近づかない、他の犬との喧嘩、しつけ行動の喪失、トイレの場所を忘れる、飼主を忘れる、飼主の呼びかけに応答しない、など。
運動障害
16〜24ヶ月(平均20.8ヶ月)
失調性歩行、測定過大、、頭部震戦、ふらつき、段差の乗り越えができない、ジャンプできない、転倒、歩行困難、起立困難(末期)、食物のくわえ込みや咀嚼の困難、など。
視力障害
17〜24ヶ月(平均21.2ヶ月)
暗闇を嫌う、階段の昇降を嫌う、物にぶつかる、音を発するものに敏感になる、車の音を怖がる、威嚇反応の欠如、失明、など。
死亡
〜28ヶ月
報告では安楽死は18〜28ヵ月齢(平均23.1ヶ月)、自然死は26〜28ヶ月齢と推測される。

【診断】

  NCLが疑われる症例の神経症状の特徴と月齢との関係を経時的に観察し、上記の内容と比較することによって、かなり高い確率で本疾患を臨床診断することが可能である。しかし診断の助けとなる臨床病理学的変化はない。一方、大脳の萎縮が比較的強く表れるため、CTおよびMRIがかなり有効な補助診断となりうる。ただし、萎縮の程度は、個体によりかなり異なるようである。基本的に、NCLは病理組織上の特徴により確定診断される疾患であったため、生前に確定診断するためには脳生検を実施する必要があった。しかし最近、原因変異が同定されたため、わずかな血液や口腔スワブなどから得られるDNAを使用して簡単に遺伝子診断できるようになった。実際に、当方の調査によると、国内の発症個体のうちで、遺伝子型を決定するための試料が利用できた個体全てが、この変異をホモ接合体として有していた。


■ CL DISEASE IN BORDER COLLIES (The Beginning) By Gloria Whyte
(Crestvale Kennels) 【Border Collie Club of Victoria Inc 2005 Newsletter  
    "BachChat"】

  1966年、夫ジョンと私(Crestvale犬舎)がGlenine Lady Vikkiという台牝を購入し、ボーダーコリーの繁殖に情熱をそそぎ始めた頃、私たちにとって耳慣れないセロイドリポフスチンと診断されるボーダーコリーの衝撃的な疾患について多くの書物が書かれていました。  1968年に生まれた最初の仔犬たちの中で牡犬を残した私たちは彼にオーストラリアチャンピオンタイトルやCDオビディエンスタイトルを取らせたあと、遺伝的な時限爆弾を受け継がせていたことに気づくこともなく(close breedingにも関わらず)、さらに美しい仔犬たちを繁殖し続けました。
 1980年のはじめ、私たちはある夫婦の訪問を受けました。彼らは18ヶ月になる牝犬を持っていました。その犬はニューサウスウェールズの牡と私たちの血統から出たヴィクトリアの牝を掛け合わせて生まれた子で、メルボルン大学獣医科クリニックにおいて「視覚障害」があると診断されたのです。彼らは障害を持った仔犬を誘導してくれる別の仔犬を欲しがっていました。しかし彼らが新しい仔犬を迎える前に、障害を持っていたメス犬は発作を起し、安楽死させられました。その後、同じ年に別のボーダーコリーが私たちのもとに連れてこられました。その犬は私たちの犬舎の子で、驚くほど似た症状を呈していました。この2頭の犬たちは共にニューサウスウェールズとビクトリアの血統でしたが、それまで私たちはこのような症状に遭遇したことも、見たこともありませんでしたので、この血統について完全に混乱してしまいました。私たちはこの事態にどのように対応して良いかわかりませんでしたが、クラブのニュースレターBackchatに短い記事を書き、私たちの繁殖には未知の病気が存在していることを知らせました。
数年後、別の仔犬が診断されました。この犬はニューサウスウェールズの血統は入っておらず、私たちの台牝の血を強く受け継いだラインブリードの繁殖によるものでした。このことは私たちに次のような事実を確信させました。つまり、異系交配(outcross)と思われた最初の症例の不可解さはありますが、私たちのブリーディングは単に障害を受け継がせてきただけでなく、それはまさに常染色体性劣性(両親がキャリア)だったということです。

 上記のことは私たちや他の繁殖者たちを悲嘆にくれさせました。ボーダーコリーを愛する者たちで一体だれがこの美しい犬たちにこのように悲惨で悲劇的な病気を負わせようとするでしょうか。
この頃までにはこの病気はメルボルン大学リサーチ・センターでセロイドリポフスチン症(CL)として確定され、犬種内のパニックは事実と共にしだいに公になりつつありました。
この病気をよく知ることと、血統を確認することがクラブにとって非常に重要な仕事になりました。私にとっては極めて個人的な仕事でした。このことで私はメアリー・クイン(Fyneglen犬舎)にとても感謝しています。メアリーは、最初の症例に適合する血統を見つけるために、際限なく時間を費やし、事実、やり遂げてくれたのです。最初にキャリア犬として公表されたMargian Skipper Tooの父方の5代祖にはスコットランドから輸入されたScottish Victoryと呼ばれた犬がいたことと、私たちのCrestvaleBonnie Lassの母方の9代祖に同じ犬がいること、そしてこの犬が唯一この血統の接点となっていることを立証してくれたのでした。
 ビクトリアのボーダーコリー・クラブは、Werribeeにあるメルボルン大学リサーチセンターのVirginia Studdart教授と共同で次のような苦渋の結論に達しました。つまり、この病気を研究し、そしておそらく病気を確認するための試験方法を見つけるためには犬たちの集団(コロニー)をつくることが不可欠だということでした。つまり、それは罹患した仔犬を産んだ2頭を交配させることが不可欠で、その仔犬たちはWerribeeのリサーチセンターに差し出されることを意味していたのです。この決定は今になってもなお私にはつらいことでした。ビクトリア・ボーダーコリークラブはこの仔犬たちと、その後の仔犬たちや研究を支援する基金を設立しました。仔犬を繁殖している、あるいは種オスを所有している全てのメンバーは仔犬あるいは種牡1頭に付いくらかの寄付金を求められました。1989年に設立された基金は継続されており、今ではニューサウスウェールズ大学の研究資金にもなっています。
 ここから私の書きたいことは、最終的には、罹患犬、キャリア犬、そしてクリアな犬達を見極めることが出来る待望の試験方法(1980年代初めに、メルボルン大学リサーチセンターで「我々が生きている間には不可能」かもしれないと言われましたが)をもたらすであろう研究に貢献しているということだけでなく、そこにはより人間らしい側面が含まれているということです。
 まずはじめに、当時関わった人々すべてに感謝します。特に、私たちのCrestvale Bonnie Lass がボーダーコリー種にもたらした障害のもとになる突然変異を持っていたことによってターゲットにされていた時、メアリー・クイン(Fyneglen Kennels犬舎)が私の正気を支えるために多大な支援をしてくれたことを改めて感謝したいと思います。クラブ内のほかの繁殖者や、ビクトリア・コリー・クラブによって設立されたCL委員会は1980年代後半から以後、メルボルン大学リサーチセンターに支援してきたことを認められるでしょう。

  最後に私は、所有している犬たちの名前をキャリア犬として公表してくれた誠実さと、キャリア犬だけでなく今後の繁殖のためにクリア犬の血液を提供してくれた繁殖家全てに対し、個人的に感謝の意を表したいです。特にこのプロジェクトに懸命に取り組んでくれたメルボルン大学リサーチセンターとニューサウスウェールズ大学のアラン・ウィルトン博士(Dr Alan Wilton)およびスコット・メルヴィル氏(Scott Melville)に計り知れない感謝の意を表します。かならず見つかるであろう試験方法のための基金に寄付してくださった人を忘れないように。

私たちが生きている間にこの試験方法が発見されたのはすばらしいことです!!!                              -------------------Gloria Whyte (Crestvale Kennels)