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TNS:捕捉好中球症候群 (HEREDITARY NEUTROPENIA)

"Summary of information known at this time- " (現時点での要約)
1.
常染色体性の遺伝様式が疑われています。つまりCLのように両親がキャリア犬であるようです。 
2. オス・メスの子犬両方に発症します。
3. 発症した子犬は同胎犬より小さく、成長も遅く、フェレットのような外観を呈しています。
4. この病気の特徴は、跛行(歩行困難)と下痢および高熱です。
5. 兆候は生後2週間から遅くとも7ヶ月後にはみられます。
6.
 
血液検査で、好中球数減少、非再生性貧血にもかかわらず循環血液中における有核赤血球の出現、空腹時における高コレステロール血症、血清アルブミン値の低下、血清アルカリフォスターゼ値の上昇が認められることがあります。
7.
 
四肢の骨のX線所見において、骨密度の低下と骨皮質の菲薄(ひはく、厚さがうすくなること)が認められ、骨幹端での骨折が確認される症例もあります。その骨折に近い領域に、骨硬化がみられることもあります。
8.
 
骨髄の生体組織検査(バイオプシー)では、著しい細胞増加状態が認められ、このうちの多くは骨髄細胞であって、そのなかでは棹状・分葉核好中球が優勢にみられます。

■ ボーダーコリーの捕捉好中球症候群
   TNS*:TRAPPED NEUTROPHIL SYNDROME OF BORDER COLLIES

TNSはCL(Ceroid Lipofuscinosis)と同様に常染色体劣性の遺伝性疾患です。
罹患した犬の治療法はなく、必ず死に至る遺伝性疾患です。

現在オーストラリアで確認されている例で、最も長く生きた犬の年齢は2歳8ヶ月齢です。
ほとんどが生後4ヶ月齢ぐらいまでに死亡するか安楽死をさせられています。

TNSの兆候はとてもさまざまですが、罹患犬のほとんどに見られるのが血球中の好中球の欠乏です。
感染症から体を守る働きを担う好中球は骨髄で作られます。罹患犬も骨髄で好中球は作られていますが、循環血中へ出て行くことができません。
つまり、TNSでは骨髄中には好中球はたくさんありますが、この好中球(=Neutrophil)が骨髄で捕らえられていて(=Trapped)血流に届くことができません。これが、Trapped Neutrophil Syndromeという病名の由来です。
血液中の好中球の欠乏により、感染症への感受性が高まります。

以前は、TNSは生後数週間で兆候が現れるとされていました。
これまでのケースでTNSの欠陥遺伝子は体のいくつかのシステムに影響を及ぼしますが、最も共通していることは免疫システムへの影響です。
そのため、普通は感染しないような細菌にも感染してしまいます。
感染した細菌の種類により、兆候を示し始める時期や症状がそれぞれのケースにより違うことがわかっています。
また、獣医師に連れてこられた時は、よく見られる虚弱新生子と思われて、TNSと診断されることが殆どありません。

TNSに関する研究報告

  Massey大学で筆者らは興味深い疾病を来したボーダーコリーを数多くみてきた。
6週齢から7ヵ月齢にわたるこれらの子犬は、跛行、慢性の下痢および食欲不振をはじめとする症状を呈していた。これらはみな、同胎の子犬よりも小さく、持続性の発熱がみられた。
持続性の骨感染症および消化管感染症により、この子犬たちは安楽死させなければならなかった。

 これらの子犬を対象にさらに精密検査を行ったところ、白血球の一種である好中球とよばれる血球の数が循環血液中にきわめて少ないことが明らかになった。
 好中球は主として細菌を破壊する役割を担っているが、循環血液中に好中球が少ないということは、好中球の産生量が減っているのか(好中球は骨髄で産生される)、好中球が骨髄から循環血液中に放出される際に何らかの問題があるのか、循環血液中にいったん放出された好中球の消費量が増えているのかのいずれかが原因であると考えられた。好中球の消費量が増加しているという説は考えにくいと思われた。なぜならこの現象はイヌにおいて一過性のものであるはずであるが、これらの子犬では少なくとも2週間はこの所見が認められたためである。
 このため、次の段階として、これらの子犬の骨髄のサンプルを採取することとした。これにより、骨髄は十分な数の好中球を産生していたが、その好中球が循環血液中に放出されていないという事実を確認した。
つまり、骨髄は事実上好中球のいわゆる「便秘状態」にあったのである。
 この病態は医学用語では「myelokathexis」(訳注:日本語の定訳はないようです)といい、動物においてもヒトにおいてもきわめてまれなものである。

 これらの所見は答えになるというよりはより多くの疑問を生んだ。
なぜ好中球は骨髄でせき止められているようであるのか。好中球が循環血液中に移動する際に通らなければならない膜が十分な透過性を有していないためであるのか。それとも、これらの好中球が損傷した組織が放出する因子によって感染部位に引き寄せられないためであるのか。

 この病態は遺伝性のものである可能性がある。これらの子犬の多くは血縁関係にあるためである。ただし、この病態が遺伝性であるのかどうかについて結論づける前に、筆者らはさらに多くの症例をみる必要がある。現在、Massey大学ではこの問題に関するさらなる研究を進めており、ここに概説したものと同じような経験をしているブリーダーから話を伺いたいと考えている。筆者らに寄せられた情報は必ず機密事項として扱うつもりである。

Frazer Allan
The Vet Clinic
Five Cross Roads
PO Box 14 115
Hamilton
Ph: 07 855 4901
Boyd Jones
Department of Veterinary
Clinical Sciences
Private Bag
Palmerston North
Ph: 06 354 3374

TRAPPED NEUTROPHIL SYNDROME OF BORDER COLLIES

(ボーダーコリーの捕捉好中球症候群・TNS)
*(訳注)
調べた限りでは、この病名は日本語に正式に訳されていないようです。
日本語での病名については、ボーダーコリーの先天的、遺伝性の可能性のある病気であることを強調するためあえて原文に則した病名にしていません。正式な日本語の病名に翻訳された時点で修正が必要なら行うものとさせて頂きます。
trapped:この場合、好中球がなぜか骨髄の中に入ったままで放出されずに「身動きが取れない」という意味を持たせてるものと理解しています。)

海外からの報告例:#1

  約15年前、NewZealandでTNSを罹患していると確認された子犬は、正常なサイズで健康な状態で生まれましたが、生後2週間あたりから、他の兄弟より発育が遅れだし、他の兄弟と遊ばなくなり、6週後の血液検査で好中球の不足が確認されました。

 この子犬の事例により、TNSはコリー種に見られる遺伝性の周期的に好中球減少が起こる遺伝性疾患(グレーコリー)とは違うものだということがわかりました。
その他のケースでは、10から16週齢で兆候を示した犬もいます。
つまり、このような場合には、健全な子犬として新しい飼い主に渡された後、発症したということです。

 当初TNSはオーストラリアのラインにのみ生じるものと考えられていましたが、2005年からの調査により、少なくとも40年以上前から各地のボーダーコリーに発生していたと考えられ、現在では、ボーダーコリー全体の5%〜10%がTNSの欠陥遺伝子のキャリアと推定されています。

 オーストラリア・ニュージーランド・イギリスを始め世界のワーキングドッグ、ショードッグにTNSのキャリアが存在しています。キャリアの頻度数はCLより高いと考えられます。

 オーストラリアのNew South Wales大学のAlan Wilton研究室では、2005年よりTNSの研究が開始され、2007年からTNSのDNA検査が行われています。この検査により、罹患、キャリア(TNSの欠陥遺伝子を継承していますが、それによる影響を受けていない個体)の区別ができます。

 ブリーダーがこの検査をうまく利用することができれば、TNSにより亡くなる子犬を作り出すことが完全に無くなります。

海外からの報告例:#2

  現時点で、オーストラリアでブリーディングされTNSに冒された子犬が生まれた6例の報告を得ています。
タスマニア州およびウェスタンオーストラリアでも罹患した子犬が産まれている。

 ウェスタンオーストラリアのSarah Doddsは、不幸にしてこの疾患をもつ犬をこの世に送り出した経験を持つ。Sarahはこの罹患した子犬の血統書とその写真を公開する許可を寛大にも許可してくれた。「フェレットのような」外観を呈する罹患犬を実際に目にすることが、他のブリーダーの啓蒙に役立つという願いをこめて。

 Sarahのこの問題に対しての取り組みは立派であり、彼女の勇気とこの犬種に対する献身的な態度、そして一貫した姿勢に対し最大限の賛辞を送るものである。

 以下はSarahによるTNSに冒された薄幸な子犬の短い回想記です。

SUMMARY OF TNS LITTER DECEMBER 1997 written by Sarah Dodds
Sarah Dodds 「TNSの子犬達」(1997年12月生)
 1997年12月中旬に、ボーダーコリーの出産予定になっていました。その出産は母犬Borderquest Coventry Blue’sにとっては最後の出産予定であり、その出産が今までどおりである事を期待し楽しみにしていました。しかしながらTNSに罹患した子犬が2匹生まれるという結果になってしまったのです。1997年12月15日オス2頭、メス4頭という出産でした。(pedigree1参照下さい)

 少しおかしいと気付いたのは2週令の時で(それまでは子犬達は全て平均的な大きさや体重でしたし、見た感じも正常に育っているようでした)、ブルーアンドホワイトの2頭のメスが他の子犬達に比べ少し小さいのです。

 その時、たまたまなんですが、他の州のブリーダーさんと話す機会があり、ボーダーコリーで顕著に見られるCollie Eye, CL, and HD等について話し合っていました。
 話がTNSになった時、私はその時点で1997年に話し合われたものを読んだ以外何の情報も持っていませんでした。
 会話が進むにつれ、我家の状況に近い事に気付き始めたのです。 そしてこのブリーダーさんにTNSの個人的な経験を聞いてみたところ、彼女はTNSに罹患しているとは知らずに子犬を購入した経験があり、その犬は安楽死せざるを得なかったとの事でした。
 そこで私は彼女に我家の2頭の子犬の事を話し、何が起こっているのだろうかと聞いてみたのです。

 彼女は「それはTNSかもしれない、もっと詳細に調べるべきじゃないか。」とアドバイスしてくれました。このブリーダーさんには本当に感謝しています。
 私は患っている子犬2頭を地元の獣医師に連れて行った所、親切にも無料で血液検査をして下さいました。そしてTNSの可能性が考えられるとの診断が下され、研究の為7週令の時、他で生まれた8週令の子犬と共にMurdoch 大学に送られました。(この3頭目の子犬はpedigree2を参照して下さい)
 3頭の内、我家の2頭はこれ以上生きさせるのが残酷であるという事で16週令で安楽死となりました。コルチゾンの投与にも関わらず、この子犬達は相当な痛みに耐えなければならず、治療の見込みがないという先行きの暗いものでした。我が家の子犬ではない子犬は、5ヶ月齢まで生かされました。

私の観察より;

2週令では;
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同胎と少し「違う」という兆候を見せ、成長もわずかに遅いという状態でした。

4週令では;
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同胎の正常な子犬と比べ大きさは約半分しかなく活発さもありませんでした。 そして2頭共に一両日の内に食欲が減退し、いくらあやしたり手から食べ物を与えようとしても改善されませんでした。
罹患した2頭はおとなしく、遊び好きでもなく、他の子犬達から離れ単独で過ごしていました。(子犬が転げまわりながら遊んでいる中で傷つけられるという恐れからではないかと推測されます。)
そして彼女達にはさらに下痢や発熱が始まりました。 毛並みも他の子犬に比べると貧弱で艶もありませんでした。さらに、1頭の下唇に時々膿瘍(のうよう)が出来る事に気付きました。

5週令では;
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外で過ごしている時、隅に座りクンクン泣いているだけという状態でした。
この子犬たちを持ち上げ、脚の関節に少しでも力を加えたら痛みでキャンキャンと泣き、降ろせばよろよろと歩きながら苦痛でクンクンと泣くという有様でした。
又、この時点でこの罹患した子犬達の頭は特徴的なフェレットのような形をしていました。(写真参照下さい)

この子犬達はたえず痛みがあり、彼女達が苦しむのを見るのは本当に心が痛むものでした。しかしそういう状態にもかかわらず、彼女らは時折、兄弟たちと遊ぼうと試みる事があったのですが、子犬の遊びでたたかれたり噛まれたりすると、すぐに犬舎のすみに戻ってしまいました。

6週令では;
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6週令になる直前に子犬全頭予防接種を受けたのですが、接種後、罹患している2頭の内の1頭の「Mo」はかなり調子が悪くなってしまったのです。そして「Mo」は私の良き友人でボーダーコリーのオーナー・ブリーダーでもあるRoslyn Atyeo獣医師に引き取られました。
彼女はその時Murdoch 大学の獣医学部3年で「Mo」のケアーを通して、TNSの所見をまとめた論文作成の可能性を探っていたからです。
彼女は「Mo」を6週半で自宅に引取り飼養し、大学に行く時は常に連れていきました。後ほど、獣医の看護士が残りの2頭を引取り、大学のグランドで2頭は短い一生を過ごしました。

私が直接に聞いた情報によると、TNSはCLと同じく常染色体による劣性遺伝とされ、TNSの発症を減らす唯一の方法は罹患した子犬を公開することです。
このことを申し上げる時、私は心の底からTNS罹患犬を持った誰もが進んで血統書の公開をして欲しいものだと願っています。
すべてのボーダーコリーのブリーダーがこれに協力する事により知識と理解を深め、罹患率および罹患した子犬の苦痛を減らす事が出来るのです。
どうぞ、現実から目をそむけないで下さい。
終わりに
この経験を通して、私と一緒にいて下さった方々に感謝します。まず最初に、痛ましく胸が張り裂けんばかりの経験であるにもかかわらず、"Mo"を個人的に進んで連れ帰ってくれたRoslyn Atyeo獣医師に、また、無料でテストをし低価格で薬を下さり、この子犬たちにわずかでも安らぎを与えて下さったApple Cross動物病院に感謝します。
また、Murdoch Small Animal Hospitalにも。彼らは彼らの費用で更なるテストをし、子犬達の面倒をみて下さいました。最後に、ウエスタンオーストラリアやその他の州のボーダーコリーブリーダー仲間の多大なる支援と友情に感謝します。

Sarah Dodds
Borderquest Kennels

TNS発症犬の写真  
photos of affected puppy with sibling

TNS発症犬の血統書
pedigree's of affected puppies<

TNSのPDFファイル